〜元・転職エージェント、現・保育園の現役園長が語る保育士の表と裏〜
『保育士は重労働(というか肉体労働)で保護者や同僚などの人間関係も煩わしくて、よく目的もわからないただ監査のためだけに書いているような書類仕事が多くて、おまけに給料は安くて嫌になっちゃう…』
本当にそうですよね。先生方、日々のお勤めお疲れ様です。私も園長という立場から先生方の頑張りには大変感謝しています。
さて、前回は「保育士の転職氷河期がくる」というタイトルで記事を書きました。一言で言えば、保育園の競争が始まるのでそのときに市場価値のある保育士になっていないと一生低賃金でしんどく働く未来しかない、という話をさせていただきました。(これは保育業界に限った話ではないですね)
ということで今回は現場で活躍する保育士、いてくれるととても助かる保育士、逆に正直いると困る保育士という観点から「超できる保育士=ハイパフォーマンス保育士」の要件とは何かということをまとめてみたいと思います。ただ、今回は、例えば英語がしゃべれるとかピアノが超上手いとかいわゆるスキルの部分には言及しません。むしろその前にあるといえるマインド(意識や心持ち)や働き方・仕事の進め方という切り口でハイパフォーマーはどんな人かということを紐解きたいと思います。
今いる組織内での評価を上げたいという保育士の方にも「ああ、園長はこういう観点でみているんだ」と参考になるかもしれません。
まず今回は「マインド編」です。
ハイパフォーマンス保育士の特徴〜マインド編〜
ポジティブに捉えなおせる
自分の意に則しない行動をしたこどもに対して、ついついイライラしてしまうこと、正直言ってありますよね。そんなイライラ自体がこどもにも良くないことも知っているし、ときには感情的になってしまったり、自分の考えを押し通そうとしてしまったりして…そんな対応をしてしまった自分を振り返って嫌悪感をいだくことも、保育士をやっていればたくさん経験すると思います。
そんなときにそのイライラを押し込めてくれるのがポジティブな考え方で捉え直すことです。(これは、NLP(神経言語プログラム)の『リフレーミング』という考えです)
NLPは保育士だけでなく育児に携わる人にはとても役に立つ考え方だと思います!入門編として使える本を2冊ほどご紹介します。
いつもニコニコと穏やかにこどもに接していてくれる先生は、このリフレーミングがとても上手です。それができているから、子どもの行動をまず好意的に解釈してから子どもに伝えたいことを伝えられる、つまり気持ちの受け止めがしっかりとできるているんですね。こんな先生は、もちろんこどもからも好かれていますし、はたから見ていてもとても穏やかで気持ちのいい保育をしています。
「まずこどもの気持ちを受け止める」…なんてことは保育士にとってはいまさら言われるまでもないことです。しかしながらどうやったらそれができるかを理解している先生はごく少数な気がします。(だから希少価値なんですけどね)
そのひとつの回答がリフレーミング、つまり状況や内容をポジティブに捉え直す力を身に付けることではないかと思っています。
自分で目標設定ができる、未来志向ができる
安定してパフォーマンスを発揮している先生は、自分自身の目標をうまく設定している印象があります。
例えば、ピアノを使ったリズム遊びのバリエーションをもっと増やしたいとか、初めて障害児を担当するからその知識をこの1年で高めようとか、目標は立場・状況によって様々です。保育に関すること、仕事に関することであれば、はっきりいってなんでもいいと思ってます。自分で決めたものであれば。
目標を持つことは人を前向きにさせます。
死ぬほどしんどい練習に耐えて部活をやり抜いたとかダイエットに成功して素敵な相手と出会ったとか、「今思えばあの時しんどかったけど、あの経験があったから良かった」と思えるようなことって結構ありませんか?そんなふうに現状のしんどさが「結果」ではなく「過程」だと認識できるから目標を持つことは大事なんです。(じゃないとただひすらつらいだけです。)
では、設定した目標をやり切るのがしんどくなったらどうしましょうか?
止めればいいんです。
だって、その目標を設定したのは自分なのですから。それをやめても誰からも責められません。また新たに目標設定をしなおしてやり直せばいいんです。だからこそ、与えられたものではなく、自分で設定した目標を持つことが大事なんです。
また、こういう人は「未来志向」といえるかもしれません。未来志向の人というのは、今や過去だけにとらわれるのではなく、自分の明るい未来を想像し、そこに向かうために今目の前の事象があると考えられる人のことです。
保育園ではこどもの大事な未来を預かっているわけですから、それに対峙する保育士が未来志向であることはとても大切なことだと考えています。
未来志向の強い保育士は、こどもの目の前の一挙手一投足にとらわれて小さなことと細々と指摘・指導することなく、とても受容的で穏やかな保育をしてくれていると感じます。
あなたは今、自分の目標を持っていますか?自分の明るい未来を想像できていますか?
もしできていないくても自分を責めないでください。
それは、ただ今いる環境にあなたが恵まれていないだけかもしれませんし、自分ごととして捉えれば、今までの自分がそれを意識してこなかっただけかもしれません。
自分の力で変えられるのは自分だけです。他人は変えられません。自分で変わるアクションをとりましょう。
問題解決思考ができる
少し堅苦しく書いてしまいましたが、簡単にいうと何か問題が起きたときに「じゃあどうすればいいか」という発想を持てる人のことです。
保育の仕事というのはめちゃくちゃ計画を立てて行うことですが、実際の毎日は即興の連続と言ってもいいですよね。計画通り思い通りにいくことの方が稀ですので、そういう意味では瞬間瞬間で大なり小なりの問題が発生しまくっているわけです。
周りにいる「できる」先生ってやたらとトラブルに強いイメージがないですか?いろんな引き出しを持っていて、なんか知らないけどテキパキと大変な局面を打破していってしまうそんなかっこいい先生まわりにいないでしょうか?
その先生は、意識してかしていないかはわかりませんが、問題解決思考を身につけている先生です。つまり、何か問題が起きたときにまず「どうすればこの問題を乗り越えられるか」を考えられる人です。
これ、結構できるようでできないんです。
だって、目の前で問題が起きたら、「なんで私の思った通りに行かないの?」とか「問題ばかり起きるなんて自分はダメな人間だ」とか「あいつのせいでこんな問題が起こるんだ」とか考えがちではないですか?
でも、上のどの思考を辿っても目の前にある問題ってなくなりませんよね?自分をいくら責めても泣いている子は泣き止みませんし、どんなに相手のせいにしてもクレームを言ってくる保護者はいなくなりません。
ただ、ひとつだけ気をつけてください。これは問題を自分の中だけで抱え込みなさい、と言っているわけではないです。誰かに解決策を聞く、手助けをしてもらうという手段は、たいていの問題解決手段にとって最善の方法になります。そんな相談のできる相手が周囲にいるといいですよね。
アクションプラン「愚痴を言わない」
ポジティブで、目標設定ができて、未来志向で、問題解決思考を持てる…
「いやいやとてもじゃないけどそんな完璧な人間いるんですか?少なくとも私にはできないな」なんてと思いませんか?
もちろん全ていきなりできる必要はありません。まずはできることからやるべきです。
そのための「今、この瞬間から」「誰にでもできる」たったひとつのとっておきの行動指針(アクションプラン)をこの記事を読んでくださった方に授けます。
それは「愚痴を言わない」ことです。
私の知る素晴らしい先生は、(職場で)愚痴を言っているところを見たことがありません(もちろん、家族や友人の前では言っているかもしれませんが、少なくとも職場では一切愚痴を漏らしません)。
たしかに、できる保育士のマインドを持っていたら愚痴なんて漏らすわけがないんです。
何事もポジティブに置き換えれば愚痴をいうべき対象などそもそもなくなりますし、愚痴というのは現状への不満なわけですから、それを解決しようとして目標設定をして行動をしようとする人には愚痴を漏らしている暇はありません。
行動と考え方というのは表と裏の関係で、どちらが先にもなり得ます。ポジティブだから行動ができるのではなく、行動し続けているからポジティブになる、とも言えます。
自分の考えを変えるためにはまず行動を変えることから始めましょう。
その第一歩、愚痴を言わない、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
ちなみに私は職員の採用面談もしますが、前職をやめた理由について愚痴っぽく語った方は、どんな素晴らしい経歴でも、どんな高いスキルを持っていても採用しません。だって、そういう方はうちに来ても愚痴を漏らしまくるんだろうな、他の職員のモチベーションを下げるんだろうなと想像できるからです。愚痴はいう側にも聞く側にも一利もありません。(だから利害関係のない親しい仲の人の前でのみするべきなのです)
転職も選択肢のひとつ
最後にもう一つだけ追加。中には本当に劣悪な環境を耐えているとても善良な先生も多くいらっしゃることを知っています。
本当に大変ですよね。
そんな方は迷わずに職場を変えてください。
「年度途中だと迷惑がかかってしまうから」「中途半端な時期だといい求人がないから」などと躊躇している合間にメンタルを病んでしまったりしたら元も子もありません。今すぐに転職しましょう。
中には就業規則のレベルで年度途中の退職を『禁止』している園もありますが、それは明らかな法律(労働基準法、憲法)違反ですので気にすることはありません。少しでも現在の職場に違和感を覚えたらぜひ転職エージェント頼ってください。上のような法律違反もバシバシ指摘してくれます。100%手放しであなたの味方になってくれます。
それと転職エージェントは必ず複数登録してください。
各社持っている案件は正直似たり寄ったりです。一番違うのは担当してくれるエージェントの力量です。ここは雲泥の差があります。そしていいエージェントに巡り合えるかどうかは運によるところも大きいですので、複数登録をしてその可能性を少しでも上げておくのが良いでしょう。
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