保育士全員が身につけておいてほしいスキル
元保育園園長が語る園長の頭の中身シリーズ。
このシリーズでは園長がどんなことを考えているのかを明らかにすることで、
・【保育士向け】なんか園長とうまくコミュニケーションがとれない。全然園長が何を考えているかわからない、何を求められているかわからない。
・【管理職向け】初めて園長や主任というマネジメントの立場になったけどどう考えればいいかわからない。
という悩みを少しでも軽減させられればと思っています
また、えらそうに「園長であった私はこう考えていた」とか「部下はこうあるべき」と一方的に語るつもりはありません。
自分が部下時代にはこう考えて行動していた(結果、園長になってみてその通りだった/違った)というように職員/園長両方の視点から書きました。
また、僭越ながら園長先生に向けてもアドバイスになるような内容も盛り込みましたので、少しでも多くの人の役に立てればうれしいです。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は「できる」保育士はどんなスキルを身につけているかについてお伝えしたいと思います。
保育士に必要なスキルとは?
スキル(技能)と聞いてどんなことを想像しましたか?
ピアノが弾ける、ダンスが踊れる、制作がうまくできる、英語が喋れる…
どれももちろんできるに越したことはないですが「なければならない」スキルではないと思っています。
それらは得手不得手がとても分かれる分野ですし、保育はチームワークですのでできる人が主導してやれば良いと思っています(全員ができる必要はない)。
今回は第一弾ということで全員が必ず身につけておいて欲しいスキルを紹介します。
それは「報告・連絡・相談(報連相)ができる」ということです。
できる保育士は報告・連絡・相談が完璧
いやいや報連相するなんて当たり前でしょ、と思うかもしれませんが完璧にこれができる人って意外と少ないんです。
なぜなら多くの保育士はこのことをちゃんと習っていないからです。
大手の私立保育園なら外部講師を呼んでいわゆる新人社員研修の一環として報連相については教えれるかもしれません。
ただ、日々の現場で「報連相をちゃんとしろ」と口酸っぱく言われるような経験をする人は少ないのではないかと思います。
そもそも報連相とは?
ここでは辞書に載っている意味とは少し違う、実際の職場で求められている報連相の定義をお伝えします。
報告…与えられた指示の経過と結果を伝える
連絡…みんなに周知しておくべきことについてする。「情報共有」といった方がイメージに近い。全員が行う
相談…悩ましい状況について自分の考えについて確認したり助言を求めたりする
どうでしょうか?あなたがイメージしていたものとばっちり合致していましたか?
もし違っていれば、それがそのまま園長とのコミュニケーションのすれ違いにつながっています。
園長対策講座1:報告のポイント
話す方の頭は整然としてすっきりとする、聞き手は気持ちの良い「報告」の仕方とはどんなものでしょうか。
報告のコツ、報告の仕方
①何の話しをするのかを宣言する、結論から話す
話始める前に今から話す内容を「宣言」し、「結論」から言うようにしましょう。
そしてその後に詳細の状況説明を続けます。
例 「A君の保護者対応の件(宣言)ですが、問題なく対応できました(結論)。具体的には〜(詳細)」
要点が見えない報告を聞くのはかなりしんどいです。
このような場合、おそらく報告している側もしんどい思いをしています。自分の頭の中をきちんと整理できていないからです。
だから、あなたにきちんと考えを整理して相手にも伝わりやすい報告の仕方を伝授します。
以下の点を意識すると自分の頭が整理できて聞き手も気持ちの良い報告ができます。
※園長先生へ:こういうこともちゃんと指導するのが園長の仕事ですので、うんうんとにこやかに聞いた後にアドバイスをするのが筋ですよ※
②具体的、詳細に伝える
わかりづらい報告というのは知りたい情報が足りていないことがほとんどです。
報告は具体的にする。そのポイントは「5W1H」を意識することです。
<5W1H>
- いつ(When)
- どこで(Where)
- だれが(Who)
- なに(What)
- なぜ(Why)
- どうやって(How)
例:A君のお父様からクレームがありました…これだと情報が足りないので5W1Hの観点で補足する。
いつ(When)→昨日の夕方お迎えの時に
どこで(Where)→1歳児クラスの保育室で
だれが(Who)→A君のお父様とB先生が
なに(What)→A君のお父様にB先生がお叱りを受けた
なぜ(Why)→「ちゃんとうちの子を見てくれているんですか?」とお父様は言っていた※
どうやって(How)→怒鳴りつけるのではなくたんたんと問い詰めるような口調で
これだけ情報が揃っていれば園長も「じゃあ、この後お母様宛に私から改めて電話入れてお父様の意図について確認しておくね」など適切な判断ができます。
「クレームがありました」とだけ聞かされると情報が足りないので「いつ?」「なんで?」などと質問を続けざるを得ません。
もしかしたらその質問が「責められている」ように感じるかもしれません。
ただ詳細を知りたいだけなんです。それ以上でも以下でもなく他意はありません。
報告には相手に判断材料をもれなく提供するという役割があることを覚えておくと良いでしょう。
※園長先生へ:職員は思った以上に園長になにかを聞いたり相談した入りすることにビビっています。どんなに大変でも柔和に部下の話を精一杯聞く姿勢を保持しましょう※
③事実と意見は分ける(報告と相談を一緒くたにしない)
基本的に報告は事実のみをするように心がけてみてください。
要点を得ない報告のひとつに「事実と意見が混在している」というものがあります。
例
【A君がころんで頭を怪我してしまったんですが、軽いすり傷だったので私は大丈夫だと思ったのですが、B先生が医者に見せた方が良さそうな顔をしていたので、私は迷ったんですけど病院に連れて行きました。】
下線部はすべて「意見」ですので報告の際にはこの部分は省くようにしましょう。
ただ、こういいたいのはすごくわかります。
判断を迷ったんですよね。
ならば、報告が終わった後に「この場合病院に連れて行くのが良かったのかどうか」を『相談』するようにしましょう。
「経過」報告を怠らない
報告は結果だけすれば良いと思っていませんか?
経過・途中報告こそが最も大事といえます(結果を報告するのはある意味で当たり前なので)。
報告する側も報告される側も双方にメリットしかないので必ず経過報告をするようにしましょう。
やり方を修正できたり、場合によっては計画自体を見直したりできます。
そのことは難しくいえばリスクヘッジにつながるのですが、
一番の効果は「嫌な思いをする人が減る」ことにあると思っています。
例えば、園長から聞いた指示通りに一生懸命壁面を飾ったのに、全部完成させてから「ちょっとここはイメージと違うから全部直して」とか言われたらとても嫌な気分になりますよね。
そしてこれも知っておいていただけると嬉しいのですが、園長もこんな指摘をするのは心苦しいんです。
経過の報告さえあればこんな不幸な人は生まれなかったはずです。
※園長先生へ:報告を待っていませんか?指示を出したら途中で「どんな感じ?」と状況を聞きに行くのも指示を出した人の任務です。もっといえば、「全部やる前に◯◯までやったら一度報告してください」と途中報告もあわせて指示を出すことが重要です。(例:今日進んだところまでで一回見せてくださいなど)
迷ったら報告する
よく何を報告するべきかがわからない、という悩みをきくことがあります。
答えは全部です。報告をしておいて良いことはあってもしなくてよいことはありません。
報告するべきか迷ったらそれは全部報告するべきことだと思いましょう。
悪い報告ほどしづらくなりますが報告をしたこと自体を怒られることはありません。
報告の内容によっては、あなたの責に帰するミスやトラブルによって怒られることはあるかもしれません。
ただ、その悪い報告をしたこと自体を怒られることはありません。
(「なんで報告したんだ!」と怒られたことありますか?もしあったらすぐにその職場はやめてください。冗談抜きにそんな先輩、上司のいるところは人間が働く環境ではありません)
園長対策講座2:連絡のポイント
先に言ったとおり連絡の目的は「情報共有」であるということを念頭におきましょう。その上でポイントを以下のとおりお伝えします。
適切な手段を選択する
メールやLINE、システムの連絡機能、ノートやホワイトボードへの書き出し・張り出し、どれも一長一短があります。
目的に合わせて手段を選ぶと良いでしょう。(職場としては連絡の手段までルール等で明確にしておく準備は必要です。)
特に気を付けるのはLINE等での連絡です。気軽に連絡できてしまうからこそ時間や文面などはよくよく相手のことを考えて使用しましょう。
宛先に気を付ける
基本的に連絡は「情報共有」が目的ですので、関係者へもれなく全員にしなければなりません。
抜け漏れがあると人間関係にいらぬ混乱や軋轢を生むことになります。(私だけ連絡来てないけどハブられてるのかな…など邪推を生む)
余談ですが、わざと上記のようなことをやる意地の悪い人は少なからずいます。
こういう頭の悪い人からは距離をとってください。
そしてもちろん主任、園長などに相談をするべきですが、個人の性癖によるところだったりしますのですぐに改善するとは限りません。
それでもなお攻撃対象になるようでしたら迷わず辞めてください。
あなたにはもっと輝ける場所が必ずあります。
園長対策講座3:相談のポイント
この中でも一番つまづきがちなのは「相談」の仕方に思います。
そもそもこの「相談」という言葉が悪い。
恋愛相談、人生相談、結婚相談…なにか「相談」というと何か重たく感じませんか?
はじめにいったように職場で求められる「相談」とは「自分の考えの確認とそれを踏まえた助言をもらう」行為のことです。
それを踏まえて「相談」のコツを伝授します。
相談のコツ
相談の内容、状況をしっかりと伝える
まず初めに「何」について相談しようとしているかを具体的に示すことが大事です。
ちょっと園長側の言い訳(笑)を先に書いておきます。(園長先生へ;実際に部下の前でこんなことを言ってはダメですよ。)
園長はみなさんの見えないところで実は信じられないくらいの業務量をこなしています。
その一つ一つを完璧に覚えておこうとすると脳味噌がパンクしてしまいますので、園長はいろんなことを「ざっくり」と把握するようにしています。
だから「この間のあの件ですが〜」とわかっている前提で話を始めないでください。(悪気なく忘れていることが多々あります)
有益な相談の場にしたいなら、あなたが「何」を相談したくて、それが「どんな状況なのか」をまずは冒頭でしっかりと伝えることが必要です。
自分の意見と考えを「必ず」示す
相談の仕方のポイント2点目は自分の意見、考えを「必ず」示すということです。
以下3つほど例を挙げます。
①「◯◯で困っているんですがどうしたらいいですか?」→×これは相談ではなく丸投げです。
②「◯◯で困っているので△△してみたいと思うんですがどうでしょうか?」→△①よりも良いですが、相談された側には「なんでそう思ったの?」という疑問が残ります。
③「◯◯で困っているので△△と××という方法が思い浮かび、こういう根拠で△△の方がいいと思うのですがどう思いますか?」→◯意見の根拠と道筋がわかりやすくスムーズに助言できます。
①は相手に丸投げして自分の意見が入っていないのでNGです。これが許されるのはこどもだけと心得ましょう。
②のようにあなたはどうしたいのか、を必ず伝えるようにしましょう。
さらに、③のようにあなたがそう思った根拠、背景まで示した上で自分はこう思うと伝えられれば完璧です。あなたの悩みを解決してくれるような適切な助言をしてもらえるでしょう。
相談と提案を使い分ける
これはかなり上級者向けの方法ですが、時には何かしらの改善策やよりよくなる施策について園長に提案をする必要がある時もあるでしょう。
報告のところでも言ったように事実と意見は明確に分けて伝えるようにしましょう。
提案とは「現状の問題点に対する解決策の提示(相談)」なわけですから、事実をしっかりと積み上げることが求められます。
個人的には提案する際にしなければならないこと、してはいけないことはないと思っています。
なんでもやりたい、やった方が良いと思うことを気兼ねなく言える職場の方がよいですから。
だから提案に対しては細かいことをうんぬんいうつもりはないのですが、ひとつだけNGな話の持っていき方があります。
それは本当は自分の意見であるのに、あたかも他人の意見(周囲の人の総意=事実)のように話すことです。
自分に批判が来るのを避けようとするとしてしまいがちなのですが、逆の立場になってもらえばわかると思うのですが、
この言い方、めちゃくちゃ感じが悪いと思います。
総意という虎の威を借る狐のような姑息さが滲み出ていますし、結局、あなたの意見がどうなのかがぼやけるので聞き手にはとてもストレスがかかります。(私だけでしょうか?)
悩み相談はしちゃダメ?
もちろん、していいですしぜひしてください。園長はとても喜びます(笑)
ただ、タイミングと相談の仕方だけは多少気をつけた方がいいかもしれません。
園長は相談を受けると、立場上、解決策を提示したり、決断したりしなければならないと考えてしまいますので、
もし答えや解決策のいらない相談なら、初めに「ただもやもやしているので話を聞いてほしいだけなのですが」と前置きしてから話を始めると良いかもしれません。
まとめ:コミュニケーションの課題は「スキル」と「知識」で解決できる
長々と書きましたが最後までお目通しいただきありがとうございました。
今回は園長の期待している「報連相」の仕方と言うことについてお伝えしました。
今日お伝えしたような報連相の仕方(園長は報連相への対応の仕方)ができれば、する側もされる側もコミュニケーションが円滑になり要らぬストレスの軽減になります。
つまり、報連相のスキルがあればみんなが少しずつ幸せに働くことができます。
最後に余談になりますが、保育に携わる多くの人が人間関係やコミュニケーションの問題で悩んでいます。
その原因を相手や自分の「人間性」に求めていませんか?
違うんです。うまくいっていないのは(双方に)スキルや知識が足りないからなんです。
人を悪者にしても何も解決にはつながりません。スキルや知識なら身に付けることで解決につながります。
ぜひ気持ちよく働くためにも報連相のスキルを身につけていきたいものですね。
人間関係つを円滑にするための「NLP」参考書の紹介
最後に職場のコミュニケーション課題に対する知識「NLP」を学べる本を2冊ほど紹介します。
コメント